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4Gの次は「LTE-Advanced」、それって速いの?(追記2016年12月27日)

photo by jonel hanopol

ITサービス デバイス

<2016年12月に最新のLTE-Advanced事情についての情報を追加しています。>
現在、携帯電話のデータ通信回線は、4G(主にLTE)と呼ばれる規格が主流です。そんな中、さらに快適な通信環境を目指して、新しいデータ通信規格がスタートしています。注目の通信規格のしくみや、今後の可能性、さらにキャリア各社の対応状況などについて解説します。

大手キャリアが推進する「LTE-Advanced」とは?

大手の通信キャリアが本格的に導入を始めたのは、「LTE-Advanced」(エルティーイー・アドバンスト)という新しいデータ通信規格です。しかし、従来のデータ通信規格であるLTEは、下り最大速度で75Mbps~150Mbps(理論値)は出ますので、特に問題ないようにも思えます。では、なぜ新しい通信規格が必要になってきたのでしょうか?

その疑問を解くカギが以下の資料にあります。総務省の調査によれば、日本の携帯電話保有率は94.6%。そのうち64.2%はスマートフォン(以下「スマホ」)を保有しているという結果が出ています。

主な情報通信機器の世帯保有状況(平成22年~平成26年)。スマートフォンの伸びは鈍化、タブレット型端末は着実な伸び。パソコン保有率は81.7%から78.0%に。スマホの伸びは鈍化の傾向を示し62.6%から64.2%に。タブレット端末は着実に伸びており21.9%から26.3%に。総務省資料「平成26年通信利用動向調査3ページ目 主要情報通信機器の普及状況」より

<参考資料>
PDF:平成26年通信利用動向調査

当然スマホでは、インターネットを通じて動画や音楽などの大容量コンテンツを楽しむ機会が多くなります。しかし、データ通信回線が混雑していると、速度が遅くなってしまうこともあります。これは、以前からユーザーが抱く大きな不満のひとつでした。

もちろん通信キャリアは、スマホの普及に従って3GからLTEへと通信環境を着実に整備してきました。しかし、それを上回るペースでスマホユーザーが増えたため、なかなか回線の混雑状況が緩和されません。このような背景から、快適な通信環境へのニーズは非常に高まっていたのです。

そこでキャリアが導入を始めたのが、新しい通信規格の「LTE-Advanced」でした。従来のLTEのテクノロジーを拡張したもので、さらなる高速化と同時に、通信の効率化も可能になっています。いったいどのようなしくみになっているのでしょうか?

「LTE-Advanced」の中核となる技術

LTE-Advancedは、高速化のテクノロジーと、回線の混雑解消のテクノロジーで成り立っています。従来のLTEが抱えていた課題に対して、さまざまなテクノロジーで改善を図っているのです。

高速化のための主なテクノロジー

キャリアアグリゲーション

複数の周波数帯の電波を束ねて、1つの通信回線として利用することで高速化するしくみ。例えば最大速度150Mbpsの周波数帯Aと、最大速度75Mbpsの周波数帯Bがあるとしたら、この2つの周波数帯をキャリアアグリゲーションで束ねて最大速度225Mbpsでデータ通信が可能になります。

MIMO(Multiple Input Multiple Output)

送信側と受信側の双方で複数アンテナを搭載して、データの送受信を高速化するしくみ。送信側では分割されたデータを各アンテナから同時送信。受信側では複数のアンテナで同時受信して合成します。例えば送信側と受信側で各2本アンテナを使った場合、理論上は2倍の通信速度が得られることになります。

混雑解消のための主なテクノロジー

HetNet(Heterogeneous Network)

広いエリア(マクロセル)をカバーする基地局に、狭いエリア(ピコセル、フェムトセル)をカバーする基地局を重ねるように配置することで、マクロセル基地局のトラフィック負荷を軽減させるしくみです。

CoMP

隣接する基地局同士が協調してデータの送受信を行うことで、高速通信を安定させるしくみです。セルとセルの狭間では、電波が弱くて通信が不安定になりがちですが、このCoMPにより安定した通信が可能になっています。

これらのテクノロジーを組み合わせて、より快適なデータ通信を実現したLTE-Advanced。大手通信キャリアでは以前から実用化に向けて、さまざまな実証実験が行われてきました。例えばソフトバンクは、東京都中央区の銀座周辺をバスで走行しながら公開デモンストレーションを実施。2014年6月の実験では、最大1Gbpsを超える通信速度を記録しました。これはあくまでも実験ですが、LTE-Advancedの持つ大きな可能性を示しています。

各社のLTE-Advancedの対応状況は?

LTE-Advancedはさまざまな実験を経て、2015年からついにサービスの提供が始まりました。ただし、通信キャリアによって対応状況には差があります。また、LTE-Advancedの通信回線を利用するには、スマートフォンやタブレットなどの対応機種が必要になります。費用の面では追加料金などはかかりません。対応エリア内で契約済みの対応端末を使えば通信可能です。

photo by Sebastien Wiertz

NTTドコモ

LTE-Advancedによる下り最大225Mbpsのデータ通信サービス「PREMIUM 4G」を2015年3月27日に開始。サービスエリアは22都道府県の都市部(27市5区6町)から対応し、2015年度内には全国の主要都市へ順次拡大する計画です。また、速度に関しても、2015年度内には最大300Mbpsまで高速化する予定。当初は対応端末がWi-Fiルーターの2機種のみでしたが、2015年夏モデルのスマートフォンとタブレットの計7機種が新たに対応しました。

au

実は三大キャリアの中で、もっとも早くLTE-Advancedを導入したのがauでした。2014年夏から、キャリアアグリゲーションによる下り最大速度150Mbpsのデータ通信サービスを「au 4G LTE」として提供してきました。さらに2015年夏からは、下り最大速度225Mbpsまで拡張したサービスを一部エリアから順次提供しています。端末は2015年夏モデルのスマートフォン5機種が対応しています。

ソフトバンク

ソフトバンクは、公開デモンストレーションを行うなどLTE-Advancedには積極的な姿勢を見せていますが、現時点(2015年7月31日)では、まだ具体的なサービス実施は発表されていません。しかし、近いうちに導入されることはほぼ間違いないと予想されます。

海外では韓国がいち早くスタート

日本以外に目を移してみると、お隣の韓国では2013年にSK Telecomが世界初のLTE-Advancedのサービスを開始。続いて同年中にLG Uplusもサービスの提供を始めています。一方、米国でもAT&TなどがすでにLTE-Advancedを提供しています。

LTE-Advancedに見合うコンテンツの登場に期待

LTE-Advancedの普及がもたらすものは、単なる高速化だけではありません。より高速な通信が可能になるということは、それに応じて大容量コンテンツの提供も可能になります。一般的なWebサイトはもちろん、SNSでやり取りする場合も、高品質な動画や音楽などをズムーズに使えるようになるでしょう。また、コンテンツの大容量化に伴い、クラウドサービスやスマホ端末のストレージ容量の拡大も予想されます。

photo by Japanexperterna.se

しかし、現時点ではLTE-Advancedに見合うだけの大容量コンテンツは、まだ充実しているとは言えません。そのため、一部からはオーバースペックであるという指摘もあります。今後はコンテンツの拡充が急速に進むものと思われますが、特に4K動画やハイレゾ音源などの超高品質なストリーミング配信の登場に期待したいところです。

速度表示は"ベストエフォート"から"実効速度"の時代へ

LTE-Advancedの時代になっても、消費者にとっての最大の関心事が通信速度であることには変わりはありません。しかし、通信キャリアが広告などでアピールする最大通信速度は、これまで理論値の上限である"ベストエフォート"の表示でした。実際の通信速度はそれよりも大幅に下回ることが多く、数多くの不満や苦情が寄せられていたのが実情でした。

そこで、2015年5月に総務省の「インターネットのサービス品質計測等の在り方に関する研究会」が、事業者に対して受信実効速度も表示するよう求める指針案を策定して公表したのです。

指針案では、事業者が実効速度を計測・集計した上で、「受信最大150Mbps(ベストエフォート)、受信実効速度は14.1~37.6Mbps」など、受信最大速度だけでなく実効速度も表示するように要求しています。

広告表示における実効速度表示のイメージ総務省資料「移動系通信事業者が提供するインターネット接続サービスの実効速度計測手法及び利用者への情報提供手法等に関するガイドライン(案)」より

<参考資料>
PDF:移動系通信事業者が提供するインターネット接続サービスの実効速度計測手法及び利用者への情報提供手法等に関するガイドライン(案)

この指針案が実行されれば、今まで慣習的に定着していたベストエフォート表示が見直され、実効速度も確認できるようになりそうです。今後は各キャリアのLTE-Advancedの対応状況とともに、実効速度もきちんとチェックしてからサービスを選ぶようにしましょう。

2016年末現在のLTE-Advancedの最新動向

総務省の規制緩和が超高速化を後押し

本記事の執筆から1年以上が経過し、LTE-Advancedはさらに大きく進化しています。2016年初めから総務省の情報通信審議会ではLTE-Advancedの技術的条件の検討が行われていました。その結果、5月に答申が出され、一部の規制が見直されることになったのです。

<参考資料> PDF:「第4世代移動通信システム(LTE-Advanced)等の高度化に関する技術的条件」(総務省)

この答申の注目ポイントは以下の2つです。
[1]上り(送信時)のキャリアアグリゲーションの使用を認める。
[2]「256QAM」と呼ばれる受信時の変調方式の使用を認める。

これにより、上りの速度は最大2倍、下りの速度は最大1.33倍まで拡大できるようになりました。

そうなると気になるのが大手キャリアの動向です。各キャリアの通信速度はどのように進化しようとしているのでしょうか。

超高速化はドコモが一歩リード 大手キャリアの最新動向

NTTドコモ

LTE-Advancedの通信サービス「PREMIUM 4G」では、2016年3月の時点で下り最大375Mbpsを実現しました。さらに、今回の答申を受けて、2017年3月以降には下り最大682Mbpsの実現を予定しています。まさに"超高速化"と呼べるような内容だけに、ユーザーとしては期待が膨らむところです。

au

2016年6月に、4G LTEとWiMAX 2+のキャリアアグリゲーションによる下り最大370Mbpsを実現。今後の展開に関してはまだ発表がありませんが、ドコモを追随していくものとみられます。

ソフトバンク

2016年10月にAndroidスマートフォン「AQUOS Xx3」(シャープ)のソフトウェア更新により下り最大350Mbpsを実現。11月発売の「Xperia XZ」(ソニーモバイルコミュニケーションズ)でも対応しています。また、6月にはLTE-Advancedに対応した衛星通信システムを試作開発。山間部などの通信エリアの強化や、災害時には基地局の代替システムとしての使用も想定しているとのこと。今後は実用化に向けた本格的な準備が進みそうです。

来たるべき2017年も、通信速度をめぐるデッドヒートから目を離せそうにありません。その一方で、提供されるコンテンツの大容量化や多様化にも期待が集まります。ビジネスチャンスを逃さないように、今後の動向にもしっかりと目を光らせておきましょう。

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この記事のライター
宮下 由多加(みやした ゆたか)

1972年愛知県出身。雑誌編集者を経て、2000年にフリーライターとして独立。ITの複雑な内容を、鋭い観察眼と分かりやすい切り口でフォロー。主に雑誌・書籍、Webメディアで執筆を行っている。

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