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ペーパーレス化の現状と留意点とは?

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1970年代から提唱されてきたペーパーレス化は、50年近くが経過した今日でも企業にとっての大きな課題のひとつとなっています。

一見すると良いことずくめで、各種ITツールの普及を考えても、すでにほとんどの企業でペーパーレス化が完了していてもおかしくはないようにも思えますが、なぜ現在においても課題であり続けているのでしょうか?

このコラムでは、その理由を考えた上で、ペーパーレス化の導入を検討するためにはどのような点に留意すべきかを紹介しています。




ペーパーレス化の主なメリット

最初に、ペーパーレス化の導入によって企業がどのようなメリットを享受できるのかを整理しましょう。

メリット(1)「コストの削減」

会議やミーティングのために用意する資料など、多くの企業では膨大な量の紙が消費されています。紙そのもののコストや印刷費用、保管スペース費用に加え、運搬や廃棄に要する費用、またそれらの作業に関わる人たちの人件費も必要になります。ペーパーレス化は、これらのコストの削減につながります。

メリット(2)「業務効率の向上」

紙資料の場合、必要とするものを探し出すことはかなりの労力と時間を要する作業です。しかし、ペーパーレス化に取り組み電子データとして資料を管理すれば、容易に、かつ瞬時に検索することができます。また、資料の流用により別資料を作成することが容易になり、資料利用の範囲が拡大し利便性が向上します。

メリット(3)「情報セキュリティ対策の強化」

紙資料では、盗難・紛失のリスクが高いと言えます。また、閲覧可能な従業員に制限をかけることも困難です。しかし、電子データとして資料を管理することで、盗難・紛失のリスクを減らすことができます。また、システム上で閲覧可能な従業員を細かく設定することも可能です。そのことから、情報セキュリティ対策の強化につながります。



紙の使用量から見る、ペーパーレス化の今

このようにメリットの多いペーパーレス化ですが、現在の導入・普及状況はどうなのでしょうか?
PPC用紙などオフィスでのプリントに用いられる情報用紙の、最近10年間における需要動向を見てみましょう。

図1は日本製紙連合会の発表資料に基づいて作成したグラフです。この資料によると、2017年の情報用紙の需要見通しは1,836千トンとなっています。ここ数カ年漸減の傾向が続いていましたが、昨年・今年とやや"回復"の傾向にあり、依然として高い水準にあります。

この資料から推測する限り、オフィスでのペーパーレス化に大きな進展はなく、むしろ後退の傾向すらうかがえます。

PCやタブレット、クラウドサービス、Web会議システムといったペーパーレス化を後押ししてくれるツールが次々登場しているにもかかわらず、なぜこのような状況にあるのでしょうか?
その背後には、「今なお紙資料を好む人たちの存在」が見え隠れしています。



今なお紙資料を好む人たちも...

ITツールや関連サービスがいかに普及しようとも、次のような理由から、今なお印刷した資料を好む人たちは一定数存在します。

(1)複数の資料を机上に広げ見比べることができる
(2)必要に応じ手書きですぐにメモを書き込んだり、付箋を付けたりすることができる
(3)ディスプレイ表示の場合、文字が小さく表示され見にくい場合がある
(4)会議の参加者の多くがIT機器の操作に慣れておらず、長年利用してきた紙資料への愛着が強い

そして、こうした人たちの理解を得られなければ、ペーパーレス化を徹底することは難しいのが現状です。

「一度はペーパーレス化を試みたものの、いつの間にか会議や打ち合わせの場に印刷した資料を持参する人が増えてしまい、結局、印刷資料を基本とするスタイルに戻ってしまった...」――そんな企業も少なくありません。



ペーパーレス化に向けた取り組みにおける留意点

ペーパーレス化に取り組む上では、今なお紙資料を好む人たちにも一定の配慮が必要です。このような人たちはITツールの扱いに不慣れな人も多いため、ペーパーレス化を強制することによって、かえって作業効率が落ちてしまったり、社内のサポート部門に余計なコストが発生しまったりする可能性も少なくないからです。

また、ペーパーレス化に取り組む場合には、「ペーパーレス化」そのものを目的化してしまうことは避けるようにしましょう。ペーパーレス化は、コスト削減や業務効率化といった目的を果たすための手段です。そして、ペーパーレス化によって必ずしもこのような目的を果たせるとも限りません。業務内容や導入規模によっては、従来通り紙資料で情報を共有した方が良い場合もあります。

そこで、目的を明確にしたうえで、「ペーパーレス化によりそれを果たすことができるのか」を十分にシミュレートしてから進めていく必要があるでしょう。そして、そのための新たなツールを導入する場合には、下記の3点に留意する必要があります。

(1)ITに不慣れな人でも利用できること

自社内には、PCやタブレットといったツールの扱いに慣れていないという人がいるかも知れません。ペーパーレス化に限らず、新たなツールの導入を検討する際に重要なのは、そのような人たちへの配慮です。特別なITリテラシーが無くても直感的に利用できるツールを導入して、ペーパーレス環境を構築するようにしましょう。

(2)紙資料のような操作性・利便性を確保できること

紙資料を好む人にもペーパーレス化を促すには、紙と同じような操作性・利便性を有するツールが求められます。近年のタブレットやスマートフォンでは、手書きメモ、付箋、拡大表示など紙資料に類似した機能が実現しており、こうした機能と連動して利用できるツールを選択すると良いでしょう。

(3)情報セキュリティ機能が充実していること

情報セキュリティの質を高めることができる点は、ペーパーレス化の大きなメリットとなります。閲覧者の制限設定やダウンロードの禁止設定といった、情報セキュリティ機能が充実しているツールを選択しましょう。

ペーパーレス化に向けた取り組みが成功すれば、企業はコスト削減や業務効率化といった業績向上につながる成果を獲得できるでしょう。しかし、前述の通りやみくもにペーパーレス化を進めてしまうと、かえってコストが膨らんでしまい、業務効率も低下してしまう可能性もあります。

ペーパーレス化に向けた取り組みは、今回ご紹介した留意点を押さえつつ、紙資料と電子データの共存も念頭に置きながら進めていくのが良いと言えるでしょう。

この記事のライター
落合純平(おちあい じゅんぺい)

株式会社ネクストアド B2Bコンテンツマネージャー。
IT製品の紹介ページやナーチャリングコラム、メールマガジンの制作を数多く請け負い、サーバ、ネットワーク、仮想化基盤といった専門的な分野から、クラウドやモバイルといったトレンド分野まで、幅広いジャンルのWebコンテンツを制作。

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