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中小企業にもチャンス? ドローンビジネスの現状

生産管理 設計/製造/生産 購買/物流/在庫

「ラジコンみたいなおもちゃでしょ?」
「空撮くらいしか、使い道がないのでは?」

ドローンに対して、もしこのような印象を持っているとすれば、それは近年稀なビジネスチャンスを逃してしまいかねない大きな勘違いといっても過言ではありません。

この21世紀に新たな「産業革命」を起こすと言われるほど、ドローンは注目を集めています。そして、その可能性に気付いた中小企業が、続々とドローンビジネスを展開し始めています。

そこで、この記事では中小企業がどのようなドローンビジネスを展開しているのか、その現状を探っていきます。




ドローンビジネスは、世界の一大関心事!

2020年度には国内の市場規模が1,000億円を超えるとの予測も

ドローンビジネスの市場規模は、次の調査報告書にも示されているように、今後5年ほどの間で急激に成長していくと予想されています。
2015年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は104億円と推測されます。2016年度には前年比191%の199億円に拡大し、2020年度には1,138億円(2015年度の約11倍)に達すると見込まれています。
分野別では、2015年度はサービス市場が61億円と58.6%を占めており、機体市場が33億円(31.7%)、周辺サービス市場が10億円(9.6%)です。各市場とも拡大が見込まれており、2020年度においては、サービス市場が678億円(2015年度比約11倍)、機体市場が240億円(2015年度比約7倍)、周辺サービス市場が220億円(2015年度比22倍)に達する見込みです。
サービス市場は、現在、農薬散布や空撮など一部の市場が確立していますが、今後、測位技術(屋内含む)や群制御技術などドローン関連技術の開発・研究・実用化が支えとなり、橋梁等の検査や測量、精密農業、物流、その他(防犯監視など)の様々な分野でドローンが活用されることが見込まれています。
また周辺サービス市場は、機体の稼働台数に比例する形で、保険やメンテナンス市場が拡大していくと予想されます。
出典:『ドローンビジネス調査報告書2016』(インプレス総合研究所 実施)(2016年3月17日発行)

そんなドローンは当初、これまでにない空からの映像を撮影できることで注目を集め、ドラマや映画、テレビCMといった様々な映像作品に大きな変化をもたらしました。

一方、『ドローンビジネス調査報告書2016』でも示されているとおり、最近では映像制作の世界のみならず、産業界全体に大きなインパクトを与え始めています。その具体例の1つが、物流業界です。Amazon社がドローンを使った商品配送を検討しているように、配送コストと所要時間の劇的な効率化を実現できる新たな配送手段として注目を集めています。

物流業界のほかにも、農業や建設など様々な分野で活用できる可能性があるため、ドローンビジネスは「空の産業革命」と呼ばれるほど世界的な一大関心事となっているのです。こうした中、日本政府も「小型無人機の安全な飛行の確保と『空の産業革命』の実現に向けた環境整備について」という検討会を設置し、技術開発や安全確保の課題解決を通してドローンを活用した産業の育成を図っています。

そして、国内の中小規模の機械メーカーやソフトウェア会社などが、続々と新たなドローンを生み出し、産業分野での活用の幅を広げています。

i-Constructionを実現するドローン測量

国土交通省が建設におけるICT利用を推進するi-Construction

前述のとおり空撮で注目を集めたドローンは、建設業界においては新たな測量手段として期待されています。

国土交通省では、すでにドローンを使った測量や情報技術を駆使した建機による施工を推進しています。2016年3月30日には、国土交通省の特別機関である国土地理院が、「UAV(※1)を用いた公共測量マニュアル(案)」及び「公共測量におけるUAVの使用に関する安全基準(案)」を作成し、公表しました。

国土交通省による建設現場における生産性向上に向けた取り組みはi-Constructionと呼ばれ、ドローンはその要となる存在です。測量手法を劇的に効率化し、これまで測量が難しかった環境にも対応できるようになるため、建設業界では今後ドローンの活用が進んでいくことでしょう。

そして、新たなビジネスとしてドローンを活用した測量を始める中小企業も登場し、大手建設会社と共同で大規模な建設工事や造成においてドローンによる測量を導入する動きが広まりつつあります。

ドローンの飛行性能や搭載するカメラの精度、コンピュータの性能向上によって測量の精度も高まり続けているため、今後こうした動きはさらに拡大していくに違いありません。

※1 UAVとは、Unmanned aerial vehicle(無人航空機)のこと。一般に、ドローンと呼称されることが多い。

ドローンを使って実現を目指す「精密農業」

データに基づいて農業を高度化する「精密農業」

ドローン活用が期待されるもう1つの分野が、農業です。

農地や農作物の状態を定量的に分析することで、これまでの勘や経験に頼った農業を高度化する「精密農業」が今にわかに注目を集めています。そして、この精密農業の実現に大きく貢献するのがドローンであり、カメラやセンサーを搭載して農地上空を飛行させることで作物の色や気温といった農作物の管理に必要となる情報の効率的な収集という役割を期待されています。

そして、精密農業はネットワーク技術やクラウド技術、データ分析ソフトウェアを組み合わせたプラットフォームを構築し、ドローンの収集したデータを分析したうえで農地管理へと活かすことで実現できます。

ドローンを活用すれば、従来のように広大な農地を歩き回りながら生育状況などをチェックする必要はありません。そのため、農業地域での人口減少による働き手不足という社会問題の解決策としても期待されており、特に広大な農地が多い北海道ではその期待は大きなものとなっています。

精密農業におけるドローン活用プラットフォーム

ドローンの精密農業への活用を目指す組織も誕生

こうした中、2015年6月には、中小企業を含めた参加6社による「セキュアドローン協議会」の設立が発表され、農地におけるドローンの実証実験が開始されました。同協議会では、先端ドローン技術、セキュリティ技術、IoTクラウド/組込ソフトウェア関連技術、エネルギー管理システムといった各々の強みを持ち寄り、安心・安全な利用環境の構築を狙っています。



このように、国内の中小企業も続々とドローンビジネスの世界に参入しています。

そして、中小企業にとっては測量、精密農業といった形で特定の用途あるいは分野に特化することがドローンビジネス成功のカギとなりそうです。また、セキュアドローン協議会のように他社と協業することによって、新たなソリューションを提供していくことも検討の余地があるでしょう。

この記事のライター
落合純平(おちあい じゅんぺい)

株式会社ネクストアド B2Bコンテンツマネージャー。
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