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知らないと損をする「ものづくり補助金」5つのポイント

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資金力に乏しい中小企業にとって「補助金」は重要な資金調達方法の1つです。
中でも製造系の企業に使いやすいのが「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」、通称ものづくり補助金です。
補助金を申請するための情報提供は充分とは言えず、内容を理解せずに敬遠している中小企業も少なくありません。ここではそんな方のために、ものづくり補助金の、特に製造分野に関わる5つのポイントをまとめました。

1.ものづくり補助金は、なぜ中小企業に人気なのか?

ものづくり補助金とは、新しいものづくりやサービス開発に挑戦する中小企業と小規模事業者を支援するため、中小企業庁が実施する補助金制度です。
従来の補助金は、技術開発や市場拡大など公共の利益が主目的だったため、企業や大学の研究開発や試作を中心に受給されていました。

しかし、景気対策としての側面を持つものづくり補助金は、企業の設備投資を促進する狙いもあることから製造設備などにも適用でき、中小企業のニーズに応える補助金となっています。
これにより、補助金に関心がなかった事業者にも注目されています。

ものづくり補助金に限らず、補助金の利用にあたっては、まず補助対象の内容・仕組み・要件などを把握し、自社の申請事業がそれにマッチしているか確認しなければなりません。

特にものづくり補助金では、補助の上限額や設備投資の必要・不要は類型により異なるので慎重な検討が必要です。

さらに、実際に補助を受けられるか・補助金額がいくらになるかは「事前の審査」と「事後の検査」の結果次第。支払いも事業実施後となるので、こうした全体スケジュールを把握した上で申請事業の計画を立て、事前審査の書類作りと事後検査対応を確実に行う必要があります。

ものづくり補助金は、年度ごとに新しい「公募要領」が発表され、その内容に則って公募が行われます。各事業者は、この公募要領に沿って申請書類その他を作成し、窓口となる最寄りの地域事務局に提出。地域事務局は、これを公正に審査し、採択・不採択を決定します。

補助金の予算額や公募要領は毎年少しずつ異なりますが、直近では2016年(平成28年)2月に平成27年度補正分(予算規模1021億円)の公募が行われ、4月に締切られました。これに続く新年度分の公募要領はまだ発表されていないので、ここではこの平成27年度補正分の公募要領にもとづいて、補助金申請について紹介しましょう。

2.申請から交付まで確実なスケジューリングを

ものづくり補助金の申請から交付に至る流れは、次の7つのSTEPで構成されます。

まず【STEP1 情報収集】。この補助金事業を運営する中小企業庁や、申請書類の提出窓口となる全国中小企業団体中央会の各地域事務局Webサイトで、最新の「公募要領」や「申請書類」を入手。補助を受けたい事業について、認定支援機関(第3章参照)と連携しながら計画を練り上げます。

次に公募要領を参照しながら、応募申請書や事業計画書などの【STEP2 書類作成】を行い、完成したら認定支援機関のチェックを受け、いよいよ【STEP3 応募申請】です。

期日までに最寄りの地域事務局に提出。事務局が審査し採択の可否を決定します。続いては交付決定通知書を受けて【STEP4 交付申請】を行います。

「交付申請書」と「経費見積り」を提出し交付が決まったら、【STEP5 事業実施】です。
提出した計画書に沿って事業を進めますが、補助の対象となる経費については、領収書・見積りなどすべての書類を保管しておきましょう。

そして、予定通り事業が完了したら【STEP6 実績報告】です。
「補助事業実施報告書」と「使用経費の支払証明書類」を提出すると事務局は「確定検査」を行い、事業が適正に行われたか確認の上、補助金額を決定。事業者に補助金額確定通知を送ります。

受領した事業者が【STEP7 請求】すると、補助金が支払われます。
この一連の流れを平成27年度補正分ものづくり補助金のケースにあてはめてみましょう。

~27年度補正分ものづくり補助金のケース~
公募要領の発表は平成28年(2016年)2月5日で、この日から公募が始まり、事業者は情報収集と書類作成を行いました。
応募の締切りは、郵便が4月13日、電子申請は翌14日だったので、応募期間は約2ヶ月。
最終的に24011件の申請があり、それぞれ審査が進められました。
採択決定は6月6日で、今回の採択件数は7729件となりました(採択率32.1%)。
予定通り進めば6月中に交付申請〜交付決定も行われ、補助事業が開始されます。
事業期間は補助金の類型にもよりますが、およそ5〜6ヶ月。
11〜12月末頃に完了し実績報告書が提出されると、これを受けて確定検査を実施。
補助金額が確定したら事業者は請求書を送り、支払いが行われます。

3.あなたの会社は補助対象企業になれるのか?

ものづくり補助金は、認定支援機関の支援を受けて革新的な商品や、サービスを開発する中小企業・小規模事業者を対象としています。

日本国内に本社・開発拠点がある中小企業ならどこでも応募できますが、「中小企業かどうか」は業種ごとに規定があります。例えば製造業関連では、製造業・建設業・運輸業・ソフトウェア業・情報処理サービス業で資本金3億円以下、従業員数300人以下の企業です。

また、ゴム製品製造業(タイヤ・チューブ・工業用ベルトなどの製造業を除く)は、資本金1億円以下で従業員数900人以下の企業が中小企業と規定されています。

前提条件のひとつ「認定支援機関の支援」の「認定支援機関」とは、中小企業の経営に関わる公的支援機関として国が認定した各種の専門家や専門機関のことです。

金融機関や税理士、公認会計士、弁護士など、全国に2万5060機関(平成28年5月現在)が認定されており、中小企業の依頼に応じてこれらの専門家がチームを組んでサポートしてくれます。
ものづくり補助金の申請では、この認定支援機関と連携した取組みが前提とされているわけです。
認定支援機関は、中小企業庁Webページに一覧が掲載されているので、お近くの認定支援機関を確認しておきましょう。

4.補助金対象にふさわしい申請事業とは?

平成28年度の公募要領で示された補助対象事業は、Ⅰ.「革新的ものづくり開発支援」とⅡ.「高度生産性向上支援」の2つです。

Ⅰの「革新的ものづくり開発支援」は、中小ものづくり高度化法で定められた、12種の特定ものづくり基盤技術を応用することが条件となっています。
具体的には、
1.デザイン開発 2.情報処理 3.精密加工 4.製造環境 5.接合・実装 6.立体造形 7.表面処理 8.機械制御 9.複合・新機能材料 10.材料製造プロセス 11.バイオ 12.測定計測
のどれかの分野の技術を活用し、革新的な試作品開発や生産プロセスの改善を行う事業ということになります。

続いて、Ⅱの「高度生産性向上支援」は、Ⅰで紹介した「革新的ものづくり開発」の生産工程において、IoTなどを用いた設備投資を行ってその生産性を向上させ、「投資利益率5%」を達成するような取組みが補助対象とされています。

このⅡでは、さらに最終的な成果として「投資利益率5%」という具体的な数字もあげられていますが、当然ながら申請時点では目に見える結果は出ていません。
ですから、この場合「投資利益率5%」が達成されると審査員が確信できるような、具体的かつ実効性に富んだ事業計画を立てることが重要な課題となるわけです。

どのように取り組めばよいのかわらない場合は、例えばⅠの「革新的ものづくり開発」をあなたの事業にあてはめて考えてみましょう。
出発点となるのは、あくまであなたの会社が持つ独自の技術や工夫です。

補助金の審査では絶対的な技術の高低は問われないので、必ずしも業界的に高度な技術である必要はありません。自分たちなりの技術や工夫を使い、そこに出現した技術的課題を12分野の技術を用いて解決し、新しい製品を開発することが期待されているわけです。
普段から行っている得意分野の延長線上で、具体的な成果を上げていくことを目指しましょう。

5.どれを選ぶべきか? ものづくり補助金の3つの類型

前述のとおり、ものづくり補助金の対象事業は、Ⅰ.「革新的ものづくり開発支援」とⅡ.「高度生産性向上支援」ですが、実際の申請にあたっては、これをさらに細分化した3つの類型から最適なものを選んで申請することになります。

3つの類型とは、

  • A.「革新的ものづくり開発支援:一般型」
  • B.「革新的ものづくり開発支援:小規模型」
  • C.「高度生産性向上型」

となっており、それぞれ補助の上限金額や補助対象となる経費などが異なります。申請にあたっては、それらの違いをよく理解したうえで、自社の事業計画に最適な類型を選ぶようにしましょう。

A.「革新的ものづくり開発支援:一般型」は補助上限額1000万円で補助率は総事業費の2/3以内、対象経費は、機械装置費・技術導入費・運搬費・専門家経費で、用途に必ず設備投資が必須です。

一方、B.「ものづくり開発支援:小規模型」は補助上限額が500万円で、補助率はこれも総事業費の2/3まで。対象経費はAのそれに加え、原材料費や外注加工費・委託費・知的財産権等関連経費・クラウド利用費など幅広く認められます。もちろん設備投資もできますが、必須ではありません。

また、C.「高度生産性向上型」では補助上限額は最大の3000万円となり、補助率はこれも総事業費の2/3まで。対象経費はAと同じで設備投資が必須です。
※ここでいう設備投資とは補助事業で使う機械・装置や工具・器具、ソフトウェアを取得するための経費のうち、単価が50万円以上(税別)を計上する場合を指します。

3つの類型のうち、どのタイプを選ぶべきか迷ったら、まずはあなたの申請事業に必要な投資額に合わせて検討してみるとよいでしょう。例えば1000万円以下の設備投資であればA.「一般型」で、それを大きく超える設備投資となる計画なら、Cの「高度生産性向上型」が必要になります。

なお、設備投資だけでなく、より幅広い経費に補助金を活用したいのならば、Bの「小規模型」が適しています。ただし、Bの場合は補助の上限額が500万円までという制限があります。補助金の上限額と設備投資の有無などをよく勘案しながら選択していきましょう。

補助対象事業の3つの類型

一般型小規模型高度生産向上型
補助上限額 1,000万円 500万円 3,000万円
補助率 総事業費の2/3以内 総事業費の2/3以内 総事業費の2/3以内
設備投資 必須 可能だが必須ではない 必須
補助対象経費 機械装置費、技術導入費、運搬費、専門家経費 機械装置費、技術導入費、運搬費、専門家経費、原材料費、外注加工費、委託費、知的財産権等関連経費、クラウド利用費 機械装置費、技術導入費、運搬費、専門家経費

※設備投資とは、専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機など)および専用ソフトウェアの取得のための経費のうち、補助対象経費で単価50万円(税別)以上を計上する場合を指す。
※設置場所の整備工事や基礎工事は補助対象経費として認められていない。

補助金申請は、ものづくり企業としての自らを見つめ直すこと

ものづくり補助金は、過去3年間で約9万1,000件もの応募を集め、採択件数も約3万8,000件に上るなど人気の高い補助金です。それだけに申請事業者間の競争も厳しくなっていますが、それでも実質的な採択率は単純計算で41〜42パーセント前後と、けっして低くありません。

もちろん補助金の申請には一定の手間がかかります。しかも、公募開始後の申請期間は過去実績では2カ月しかなく、特に事業計画の検討など、今から準備を始めておきたいところです。負担に感じるかもしれませんが、申請書や事業計画書などの書類をまとめていく作業は、それ自体ものづくり企業としての自らを捉え直すことにつながります。それは、現代を生きるものづくり企業にとって、けっして無駄ではないはずです。
多くの皆さんのチャレンジと新事業の成功をお祈りします。

ものづくり補助金:情報収集・各種問い合わせ先

名称/WebページURL内容
ミラサポ 未来の企業応援サイト 「ものづくり補助金」ほか、補助金・助成金などに関わる最新情報の提供・公募要領・申請書類フォーマット・電子申請窓口
全国中小企業団体中央会 「ものづくり補助金」ほか、補助金・助成金などに関わる最新情報、各地方事務局へのリンクなど(「ものづくり補助金」の公募要領・申請書類フォーマット・申請窓口などがある各事務局へもここからリンク)
中小企業庁 「ものづくり補助金」を実施する行政機関、最新情報が発信される
認定支援機関一覧
(中小企業庁Webページ内)
申請事業の実効性確認など、ものづくり補助金申請にあたり連携が必要な認定支援機関の連絡先一覧

この記事のライター
柳井 完司(やない かんじ)

1958年大分県生まれ。1986年に独立以来、ライターとしてWebや雑誌の技術系記事、書籍執筆、企業取材、広告記事など、ITを中心とした技術系全般の取材・執筆を行っている。「月刊 CAD&CGマガジン」「月刊 建築知識」などに掲載。
特に建築系、製造系を問わずCAD、CG関連の記事制作を担当することが多い。

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